2009年07月18日

今日もいい日です

 こんにちは、小悪魔です。
 はい、あの古い洋館の図書館に住んでいる小悪魔です。幻想郷では私以外にほとんど私の仲間を見かけることはないと思いますので、小悪魔ですで問題なく通じてしまいます。これが人間だとそうはいきませんよね。
 あ、もちろん、名前はちゃんとあります。本名は正式な魂の契約を結んでいただければ教えられますので、必要な方は契約の準備をしておいてくださいね。貧血気味の人だと少し大変だと思いますので、十分に気をつけてください。レバーいいらしいですよ。
 私は略式の約束でここにいるだけなので、本名は明かしていません。普通は適当な偽名で呼ばれるものなのですが、私の場合はなんとなく小悪魔で定着してしまいました。たまに、こあ、なんて呼ばれたりします。
 かわいいですよね、こあ。あ、コアなんてカタカナで書くのは禁止ですよ。ひらがなオンリーです。ひらがなは偉大です。大老暗殺事件が起きた現場でさえひらがなで書けばとてもかわいらしくなります。

 そんなわけで、小悪魔です。
 特に大型契約をするわけでもなく、何十年くらいか、なんとなくここに住んでなんとなく働いてます。悪魔としては召喚された世界にこんな長期間のんびりしていることは珍しいです。
 でも、みんな、幻想郷に呼び出されてそこに住んでるって教えてあげると、なるほどと納得してくれます。あ、みんなというのは地元の同僚のみんなのことです。みんないいひとばかりなので今度機会があれば紹介しますね。
 えっと、納得してもらえるだけじゃなくて、幻想郷にいるっていうとみんなとても羨ましがります。あ、ご存知でしたか、幻想郷というのは今無数にある世界の中でも屈指の平和さで有名なんですよ。平和なのに、しかも決して必ずしも閉鎖的ではないという、私たちにとってもとても住みやすい環境です。特にここ数代の博麗の巫女の時代はいまこそ黄金期なのではと言われています。ぱくす=ふぁんたじあです。

 ええと。はい。小悪魔です。
 今日は私のお仕事を紹介したいと思います。


 朝。
 ゆったりと目覚めます。お日様の光なんてものはここには届きません。
 あ、朝というのは、一度寝て、起きたその時間が朝です。紅魔館の中でずっと過ごしている限り、あまり正しい時間に意味がありません。メイドさんたちも24時間誰かは働いているのでパチュリー様が生活に困ることもありません。
 そうそう、私、実は個室をもらってます。紅魔館で自分の部屋を持っているひとってあまり多くないんですよ。私も最初はメイドさんたちと同じ部屋だったこともあるのですが、指揮系統も労働のリズムも違うのにそれはややこしい、ということで今の待遇になりました。池田です。違いました。らっきーです。
 はい、そうですね。指揮系統のお話をしないといけません。
 私を呼び出したのはパチュリー様です。なので、正式に私に対して指揮権を持っているのはパチュリー様だけです。メイドさんはまず咲夜さんの、ひいてはレミリアさんの統制下にあります。私はレミリアさんの命令を聞く義務はありませんが、特に問題なければ頼まれごとは聞いてやってくれ、とパチュリー様からお願いされていますので、無駄に反抗することもありません。怖いですし。

 話が進みませんね。
 起きて、日々の支度を終えたら、あ、そうそう、悪魔は厚化粧のイメージがあるかもしれませんが、あれは主に人間のひとに喜んでもらうための演出なんですよ、普段はほとんどみんなすっぴんです、えっと、終えたら、まずは図書館に向かいます。朝一番の仕事は返却本の確認です。
 返却本が置かれていることなんてほとんどないので単なる形式の作業――だった時代も長かったのですが、最近になってパチュリー様に魔法使い友達ができたということもあって、図書館はかつてないほど賑わっています。なんと月平均で延べ八人ほどの来客があります(延べ人数ではない統計についてはコメントを差し控えさせていただきます)。
 今日は返却本はありませんでした。これは自慢ですが、私は返却された本をみれば、それを返却したのが誰であるか推理できます。的中率100%です。特殊能力です。嘘です。私は誰が何を借りていったかの記録を管理しているので、1人しか借りている人がいなければすぐにわかるというだけです。それも嘘です。記録なんて見なくてもアリスさんです。館外の人向けの返却コーナーにちゃんと本を返すのはこの世界に今のところ1人しかいません。
 アリスさんというのは、パチュリー様の魔法使い友達です。魔法のことでパチュリー様と話ができる貴重なひとです。あと、魔理沙さんという魔法使いもいます。こちらのほうはあまり魔法の話をするのは聞きません。保護主義なのよ、とパチュリー様はおっしゃってました。
 私は魔法のことはよくわかりませんが、パチュリー様によれば、アリスさんはまだまだ勉強不足なんだそうです。ただ応用力が天才的センスだと絶賛されてました。これでしっかりとした基礎を身に着ければもっと凄い魔法使いになれる、だからもっと図書館に通うべき、と熱論されてました。私に。アリスさんに言えばいいのにと思います。そんなパチュリー様が好きです。

 全然進んでませんね。返却本の確認が終わったら、あとは本の整頓と目録作成です。ここにある本のうちかなりのものがパチュリー様が書かれた本なのですが、並べていくときに情報を整理するという習慣がないようですので、過去の分からまとめて私がそのあたりを任されています。私は魔法の内容についてはわからないので、パチュリー様にも手伝っていただいたり、アリスさんにも手伝っていただいたりして、終わりはまったく見えない仕事ですが、なかなか楽しいです。一般の本もたくさんあります。小説も一通り揃ってます。
 ……はい。ある程度読まないと目録は作れないのです。読むことも仕事なのです。決して大掃除始めるとつい見かけた本を読み始めてしまうというアレではありません。仕事なので仕方ないです。ラブロマンスものがおすすめです。嘘です。いえ本当です。

 えっと。
 普段の仕事はこれくらいでした。何時間かやったら適当に切り上げて終わりです。
 図書館に侵入者があればメイドさんたちと一緒に戦うこともありますが、滅多にないことです。あまり戦うのは好きではないので基本的に平和なのはありがたいことです。門番さんのおかげです。
「小悪魔、ちょっと――」
 おっと。呼ばれました。
 呼ばれたら10秒以内にお側に。これ、大切なことです。咲夜さんにはとても敵いませんけれど。
「はいはい、ただいま参りました」
「……お願い」
 パチュリー様は私に、それだけおっしゃると櫛をお渡しになりました。
 私は心得てますので、何も言わずに受け取って、パチュリー様の後ろに立ちます。
 パチュリー様の髪はとても長く、まっすぐです。この髪を櫛で梳くのは気持ちいいです。この時間も私は大好きです。パチュリー様の髪がもっと綺麗になっていくのが見ていて嬉しいです。嘘です。いえ嘘ではないのですが、それだけではありません。
 知ってます。パチュリー様、アリスさんに髪がまっすぐで綺麗だと褒められてとても喜んでいました。
 パチュリー様の少し照れたような顔を斜め後ろから眺めながら、私も自然に笑みがこぼれます。
 櫛と、普段は使わないとびきりお洒落なティーセット。この二つはいつもセットです。
 今日は少しだけ大人っぽい上品なものを準備しましょう。

 今日も明日も、きっといい日です。
posted by 村人。 at 23:28| Comment(0) | TrackBack(1) | SS
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